1. 研究目的:耕作放棄地は“本当に再生できるのか?”

全国的に問題となっている農地の荒廃。
星野村でも、農家の高齢化によって多くの茶畑が放置され、雑草・竹・害獣による“負の連鎖”が進んでいます。

本プロジェクトでは、「20年間放置された土地を、どこまで再生し、作物を育てられる状態に戻せるか」をテーマに、課題調査と土壌改良、作付け、育成、収穫までの一連のプロセスを探究しました。

2. 現地調査:20年放置された土地の状態

調査の結果、以下の課題が見つかりました。
農業としては“ほぼゼロ地点”からのスタートでした。

  • 草丈120〜150cmの雑草に覆われ日照不足
  • 土壌が締まり硬度が高い(押し棒の貫入深度わずか2~4cm)
  • 土壌pH 5.1(やや酸性寄り・作物育成には不利)
  • 放置茶木の根が残存
  • 猪の侵入痕を多数確認

3. 改良プロセス:草刈り・抜根・耕起・畝立て

プロジェクトメンバーで以下の改善活動を行いました。

① 草刈り・茶木の伐採

草刈りと伐採の様子

20年間放置された茶木は根が深く、引き抜くためにテコの原理・滑車の利用など物理的工夫も併用して抜根しました。

② 土壌改良

  • 通気性を確保するため表層20〜25cmを耕起
  • 水はけ改善のため腐葉土を混和
  • pH調整として石灰を少量投入

③ 畝(うね)づくり

日照角度・排水効率を考え畝を南北方向に配置。農学の知見に基づいたフィールドワークを実践しました。

畝づくりの様子

4. 作付けと育成:フィールドデータに基づく試行錯誤

「ホクホク系」の紅あずま・なると金時、「ネットリ系」のシルクスイート・紅はるか。特徴の異なる4品種・計340本の苗を作付けしました。

  • 紅あずま:80本
  • なると金時:80本
  • シルクスイート:30本
  • 紅はるか:150本

サツマイモは痩せた土地でも育ちますが、実際には「土壌水分の安定化」「炎天下での除草」「つる返し」「猪対策のフェンス設置」など、多くの工夫が必要でした。
結果、340本中290本が枯れずに大きく育ちました。

5. 収穫結果と観察データ

収穫日は、地温・葉の状態・試し堀りの生育度を判断して設定。20年間放置された土地であることを考えると、非常に高い成果となりました。

収穫されたサツマイモ

【収穫データ詳細】

  • 紅あずま:50kg
  • なると金時:30kg
  • シルクスイート:30kg
  • 紅はるか:160kg
  • 合計収穫量:270kg(1株あたり約1kg弱)

特に「紅はるか」の収量が多く、この土地との相性が良いことが示唆されました。1株1kg弱という数字は、耕作放棄地の再生1年目としては十分な成果です。

6. 地域社会への貢献:子ども食堂への寄附

収穫したサツマイモの一部は、地域貢献活動の一環として、10月17日に八女市内の子ども食堂へ寄附を行いました。

子ども食堂への寄付

自分たちで再生させた畑で採れた作物が、地域の子どもたちの笑顔につながる。
「育てる」だけでなく「届ける」までを実践することで、農業の社会的意義を肌で感じる貴重な経験となりました。

7. なぜ耕作放棄地でも育ったのか(科学的分析)

サツマイモは「痩せ地耐性」「乾燥耐性」を持つ作物ですが、今回の勝因は「放置茶畑」の特性にありました。
長年堆積した落ち葉等の有機物が多く残っていたため、適切な改良を加えることで栄養保持力が高まったと考えられます。
施肥量を抑えても育つことは、「低投入型の農業モデル」としても示唆があります。

8. 社会的意義:耕作放棄地の“経済価値化”モデルへ

このプロジェクトは単なる体験ではなく、以下の地域課題解決の実験でもあります。

  • 荒廃農地の再生可能性を実証
  • 低コストで再生できる手法のモデル化
  • 収穫物を活用した地域内循環(食品加工・寄附活動)

星野村のような中山間地域では、農業体験を超えて、持続可能な農地活用モデルの核となり得ます。

9. 志望学部ごとの“研究テーマ化の例”

このプロジェクトは、どの学部でも志望理由書に接続できます。

農学部 耕作放棄地の土壌回復モデル、有機物蓄積と生産性の相関研究
経済学部 遊休農地を活用した「地域6次産業化モデル」
工学部 軽労働化のための農業機械・ロボット導入、効率的除草や抜根システムの計算モデル
理学部(環境科学) 土壌pH・微生物構造の変化分析
法学部/政策 耕作放棄地再生のための政策評価、中山間地域の土地活用に関する制度研究
文学部/社会学 農村地域の担い手減少と文化変容の調査研究

10. プロジェクトの価値

本プロジェクトは、単なる農業体験ではありません。
ゼロから土地を再生し、科学的データを収集し、地域社会へ還元する。
科学・社会・政策の視点で深められる “総合型選抜のためのリアル研究” です。