1. 研究テーマ:竹は“放置すると森林を破壊する”

今回の舞台は、20年間放置されてきた元お茶畑。
管理が行われなくなると、竹は地下茎で急速に広がり、たった数年で森林を飲み込むほどの破壊力を持ちます。

  • 太陽光がほぼ差し込まない
  • 下層植生(草・低木)がゼロ
  • 土壌がやせ、保水力が低下
  • 竹の根(地下茎)が茶畑全体へ侵食

典型的な“放置竹林の荒廃状態”でした。今回のプロジェクトのテーマは、「竹藪を本来の生態系が機能するタケノコ山へ再生できるのか?」です。

2. 課題:竹は「切っても終わらない」

竹林再生が難しい理由は、単なる伐採では改善しない点にあります。

地下でつながった“竹のネットワーク”

竹は地下茎でつながっており、一本伐った程度では変化しません。根を断ち切らなければ、また新しい竹が群れで生えてきます。

放置竹林の問題(研究視点)

光が遮断されることによる生物多様性の消失、地滑りリスクの増加、農地の消失、野生動物の餌場・隠れ場所となり被害拡大。
これらは都市では見えない「里山のリアルな社会課題」です。

3. 実践:竹を“3分の2”まで伐り、光を取り戻す

再生のための第一段階は、徹底した間伐です。

  • 密度70〜80%の竹林を、30%まで減らす
  • 地上5〜10mの高密度竹を伐採
  • 茶畑時代の古い茶木の伐採・抜根
  • 地下茎の方向を確認し、切断ポイントを調査

作業は重労働ですが、伐採が進むと地表に光が届き、下草が復活し、土壌温度が上がり生態系が戻ります。
参加者は「生態環境を改善する」という目的を自分の身体で実感します。

4. タケノコ山へ再生するための“科学的プロセス”

竹を減らすだけではタケノコは増えません。以下の条件を整える必要があります。

条件①:日光

タケノコは光の量で発生密度が変わります。

条件②:地下茎の活性化

地中の“節”が強いほど、タケノコは太くなります。

条件③:土壌の通気性・保水

土が固いままだと、タケノコが地上に出られません。

条件④:猪(いのしし)対策

一晩で全て食べられる可能性があります。

参加者は、これらの条件を満たすための地ならしや、伐採の方向性を地図に書き込みながら調整しました。

5. 再生のゴール:タケノコを収穫できる山へ

整備が順調に続けば、2〜3年後には「収穫できるタケノコ山」へ変わります。
実際、光が入るようになった場所では小さなタケノコの生育が既に確認されています。

生徒は、「調査→仮説→実践→検証→改善」という探究活動の王道プロセスを身をもって体験できます。

6. 発展:国産メンマづくりプロジェクトへ

山の再生だけでは終わりません。次のステップは「国産メンマ」の商品化です。

中国産メンマが市場の9割以上を占め、国産メンマは希少で高価です。
再生した竹林で採れたタケノコを使えば、「竹害→資源」「放置地→収益源」「里山→特産品の産地」という地域循環のモデルが完成します。

原価計算、パッケージ・ブランディング、流通経路の設計、市場調査など、探究から“ビジネス化”まで学べる稀有な教材です。

7. 志望学部ごとの“研究テーマ化の例”

農学部 タケノコの発生密度と光環境の相関、竹林生態系の回復モデル
環境科学・地学 放置竹林が土壌侵食に与える影響、地下茎構造の解析
経済・経営 竹害を逆転させる6次産業化モデル、国産メンマ市場のポジション分析
工学部 伐採効率化ツール、地形に応じた伐採方法の最適化
政策学部・法学部 放置竹林対策の政策効果分析、森林管理制度の課題

8. プロジェクトの価値

この取り組みは、単なる“竹の伐採”ではありません。
生態系の回復、地域資源の価値転換、実地調査に基づく探究、課題解決プロジェクトの経験、そして社会実装を見据えた発展性。

総合型選抜で求められる「探究 × 社会課題 × 持続性 × 独自性」を全て満たす極めて強力な実績になります。